これは、二人の仲良しきょうだいが
        お昼寝の夢の中でみたお話です。


 はるちゃん8才。あきちゃん6才。2つ違いの二人ですが、お誕生日の月はぐうぜん同じ6月生まれになったきょうだいです。いつもいっしょにいる二人ですが、それだけによくケンカもします。
 二人は時々お母さんといっしょにとなり町のおばあちゃんの家にあそびに行きます。その家にはおじいちゃんとおばあちゃんとみっちゃんと犬が一匹います。
 みっちゃんというのはお母さんのお姉さんで、はるちゃんたちにはおばさんにあたる人なんですが、体の大きさももうすぐはるちゃんたちが追いつきそうなほどしかないし、二人が「あそぼう」ってさそった時など、うるさそうな顔をする他の大人たちとはちがい、この人だけはすぐ仲間に入って来たりして、どうもおばさんという感じがせず、お友だちみたいなので、はるちゃんとあきちゃんも他の大人の人たちと同じように、その人のことを「みっちゃん」と呼んでいます。
 みっちゃんの手は赤ちゃんの頃の病気で、自分の思い通りにうごきません。だから、ごはんを食べたり、服を着がえたりする時は、いつもおばあちゃんが手つだいます。みっちゃんのお家に行ったり、又反対にみっちゃんがはるちゃんたちのお家に来た時には、お母さんもよくみっちゃんのお手つだいをします。はるちゃんとあきちゃんも時々みっちゃんのお口におかしを入れてあげたり、ジュースのコップにストローをさしてあげたりします。たまにきょうだいゲンカをしてプリプリしていても、みっちゃんの顔を見るとなぜか二人ともやさしい気持ちになれるからふしぎです。
 ある日、みっちゃんの家に行った時、はるちゃんとあきちゃんはおやつのとりあいでケンカになり、泣きべそをかいているうちに、二人ともいつのまにか眠ってしまいました。そして一人ずつがちがう夢をみました。
 はるちゃんのみた夢は、地ごくへ行った人たちがごはんを食べている夢でした。そこではとっても長いおはしを使って食べています。でもあまり長すぎて、下の方を持つとよこで食べている人にあたってしまうし、上の方を持つと自分の口にうまく入れることができず、ここの人たちはいつもお腹をすかしているようです。 
 あきちゃんのみた夢は、天国へ行った人たちがごはんを食べている夢でした。ここでも長いおはしを使って食べているのですが、みんな楽しいムードで、おいしそうに食べています。でもここでは、あれれ、自分の口に入れるんじゃなく、それぞれがまぁるくかこんだテーブルの向こうがわにいる人と、その長いおはしでお互いの口に入れっこして食べているのです…。
 はるちゃんとあきちゃんがそんな夢からさめた時、いつのまにか二人の間にみっちゃんもゴロンとねころがっていました。
「ねぇ、みっちゃんは夢みなかった?」
と思わずあきちゃんが聞きました。みっちゃんが何か言うひまもなく、
「私ね、こんな夢みたよ」
と、はるちゃんは今自分のみた夢を、あきちゃんとみっちゃんに話します。
その話に驚いたように、
「えっ、うっそー。私のみた夢はこんなのよ」と、今度はあきちゃんが話し出しました。二人が話し終わるとみっちゃんがこんな話をしてくれました。
「さっきおやつのことでケンカしたでしょう。だからきっと神様が二人にそんな夢をみさせてくださったのよ。『おやつのとりっこなんかしないで、はるちゃんはあきちゃんの口に、あきちゃんははるちゃんの口に、入れあって食べるぐらいにしなさい』ってね。ほらよく二人ともみっちゃんの口におかしを入れてくれるじゃない。みっちゃんは残念ながらお手々がダメだから、はるちゃんたちに食べさせてあげられないけど、何か別のことで二人の役に立てたらいいなぁって思っているのよ。だれかの役に立てたり、助けてあげることができたら、ただ自分のためだけに何かをするより、ずっと気持ちがいいし、天国の食事のように、人のために何かをしているようでも、結局それは自分のためになることなのよね。わたしたちの町も天国の食堂のように、みんながみんなのために何かができたらすてきだね」
「うん、そうだね」
「わたし、みっちゃんのためにもっと色んなことをやってあげる」
「ありがとう。みっちゃんのためだけじゃなく、お父さんやお母さん、お友だちなど、色んな人のために、その時その時にはるちゃんたちのできることをやってあげてね」
「わかった!」
 おばあちゃんやお母さんたちも、となりのお部屋でこの三人の話を聞いていました。何だかみんなあったか気分のひと時でした。


                                      お わ  り







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