ポエム1

   ここにはとりあえず、10代後半〜20歳過ぎまでのノートより、 “詩”の形のらくがきを載せます。
  このミッチーおばさんにも、こんなことを書いた時代があったん だ…と、なつかしいような、くすぐったいような気分です。


目 次



真心   心のふるさと  一通の手紙  青春   思い出のページ

バトンタッチ  ありがとう  自由の世界へ  その手で     オルガン 
                          
花の好きなあなたに    もしあなたが  お人形からの手紙 

君の声を君に  優しい力   赤と水色  何かが   口紅  

サイフのつぶやき  梅雨  ペンフレンド  

「さようなら」から「こんにちわ」へ  午後の浜辺で  朝の食卓

お隣さん  あじさい  付き人学級  何気ない言葉で

成人式への出席  レモンスカッシュとミルクセーキ  靴跡

ホタルの坊やと  たとえば秋は  大阪帰りのボクチン  かー君 







                                    
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真心


吹き飛べ、ちっぽけなひがみ根性。

だってほら、

心の目を大きく開いて

周りを見てごらんなさい。

暖かい真心の輪が

あなたを優しく包んでいるよ。

ただ、あなたには見えなかっただけ。

自分の事などかえりみず

人の気持ちを理解しようと

務めているひたむきな彼らの姿が…。

ただあなたは知らなかっただけ。

「ありがとう」の一言で

心の通い合う真心の世界を…。

だけど、もうあなたは気づいたでしょう。

いつかあなた自身が

誰かを取り囲む真心の一つになる事が

今あなたに微笑みかけている

たくさんの真心への

何よりのご恩返しとなる事に…。



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心のふるさと


私にもふるさとがあります。

「日記」という名の心のふるさとが…。

私は毎日そこから旅立って

そこへ帰って行くのです。

私のこの人生という旅では

色々なものをお土産として

もち帰らせてくれます。

喜び、悲しみ、むなしさ、

愚痴、反省、失敗、希望、愛、

まだまだ

口なんかでは言い尽くしきれないくらい

たくさんのものを…。

そして私が

毎日それらのお土産のうち

どれかひとつをかかえて

このふるさとに足を入れる時、

それがどんなものであっても

いつも優しい笑顔で迎え入れてくれる…、

私にとって

かけがえのない素晴らしいふるさとです。

だから私もこれからは

このふるさとの優しい笑顔に答えて、

少しでもいいお土産を持ち帰る事が出来るように

努力したいと思っています。



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一通の手紙


旅に出る日を

今日か明日かと

楽しみに待っていた手紙でした。

手紙としての使命感に燃え、

差出人と受取人の心を

どんなふうに結ばせようかと

あれこれ思案を重ねていた手紙でした。

そんな手紙の気持ちをよく知りながら、

どうしてもポストへ入れる勇気が湧かず

さりとて破り捨てる気にもなれないまま

とうとう暗い引き出しの中に

とじこめてしまった私。

引き出しを開ける度に

その手紙に向かい

「ごめんね」を繰り返している私だけど、

はたして許してもらえる時が来るかしら?

だって、何と言っても私は

この手紙の運命を

大きく変えてしまったのですから…。


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青春


青春は

みんな共通のものを目指していると

信じこんでいた私。

でもそれは間違いだと気づきました。

そう、青春は一人一人違うもの。

その人だけが持っている性格を

思いっきり発揮出来るその時こそが

「青春」なのです。

だから、

もう私も迷ったりはしません。

自分で選んで信じた青春の道を

胸を張って進みます。

人間一人一人の中にある

真心を追求することが目的の私の青春を…。

さぁ、すべての若人たちよ

あなたの青春の扉を

あなたの手で大きく開きましょう。

そして、同じ道を行く人たちと

肩を組んで歩きましょう。



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思い出のページ


幼い日の思い出を

一ページずつめくって行くと

そこにはいつも父が

優しい微笑みを浮かべて立っています。


こんもり盛り上がった父の肩車に乗って、

王様気取りの私は、

「右へ行って」 「左に曲がって」と

動くお山に命令を下す……。


ドカッとあぐらをかいた両方の膝に

私と妹を一人ずつのせて

童謡を口ずさむ父のあごひげが

私のおでこにふと触れた時の

あのチクリと甘い感触……。


勤めを終えて帰って来る父の

スクーターのエンジンの音が

私の耳に心地よく響いて来ると

昼間のふくれっ面もどこへやら。

別にお土産への期待に

胸をときめかせたわけではなく、

「帰って来た」という。ただその事が

たまらなく嬉しい私でした…。


こうして今でも時々

思い出のページをめくっては

過ぎ去った父との時間を

一人で楽しんでいる欲張りな私。

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バトンタッチ


ある秋の日の昼下がり、

お部屋の窓を半分くらい開けて

ぼんやり外を眺めている私のところへ

こんな言葉をお土産代わりに用意して

秋風さんが遊びに来てくれました。


「今は一年中で一番さわやかな季節です。

そして今は私の季節です。

でもね、もうすぐ私は

北風さんとバトンタッチしなければなりません。

せっかく皆さんとお友達になれたのに

とても残念ですが

それが私のご主人の命令なんです。

だからその時には、

又お会いできる日を楽しみに

笑顔で皆さんとお別れしましょう。

さぁ、もうそんなぼんやり顔はやめてください。

だって今のあなたは

私とは全く正反対の立場にいるんですもの。

そう、今こそあなたは

周りの誰かからリレーされたバトンを

しっかりと受け継いで

愛の道へ

駆け出して行くべき時ではないかしら?」


秋風さん、

私を目覚めさせて下さってありがとう。



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ありがとう


私の両腕君、ありがとう。

この私に、

優しい心で歩む青春の素晴らしさを

教えて下さって……。

もし、君達と一緒でなかったら、

私はきっと

自由勝手にしか生きられなかったでしょう。

まして、彼らと心を寄せ合い、

希望ある明日を語りあえる

今の幸せを噛みしめることなど

できなかったはず…。

だからこそ、こうして君達に

「ありがとう」の言葉を贈る私です。

だけど、どうしても

君達に不満の目を向けてしまう

もう一人の私を抑えきる事はできません。


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自由の世界へ


少年はやっと自由な体になりました。

そして旅だって行ったのです。

この自由な世界への旅立ちを

彼はどんなに待ち望んだことでしょう。

だから、彼のこの旅立ちには

悲しみの涙は似合いません。

友よ、そっと目を閉じてごらんなさい。

きらきら輝くお星さまの中に

彼の幸せそうな顔が見えるから…。

彼は今、これから何をやろうかと

あれこれ思いめぐらして

わくわくしているんです。

そうね、彼ならきっと

今まで出来なかったことを

大胆にやってのけるでしょう

青い海を見わたしながら

大声で唱歌を歌ったり、

学校のグランドで汗まみれになって

野球をしたり…。

そして、そして、

おっかないお母さんの目を盗んで

夕食のおかずをひょいとつまみ食い。

まだまだ沢山の事をやってやろうと

彼は意気込んでいます。


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その手で


坊や、

今日はその手で何をするのでしょう。

お庭でボール投げ?

お部屋でおとなしくお絵描き?

それともママのお手伝い?

坊やの手なら

きっと何でも出来るでしょうね。

本当に素敵よ、坊やの手は…、

だって

坊やの命令どおりに動いてくれるんだもの。

だから坊やも

その手を正しく使わなくてはね。

坊やの限りない未来を

その手でしっかりとつかんで

明るい道を歩いて行って!



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オルガン


ドレミファソラシド……、

覚えていますか?

あの教室を優しく包んだ

オルガンの調べを。


授業中に何度か

あちこちでヒソヒソ話が起こり

いつの間にか大胆になって

授業どころではなくなる私たちの教室。

他の教室では容赦なく

「うるさいゾ」の雷が落とされているのに、

私達の教室には、いつも

オルガンの和やかな調べが流れるだけ。

それなのにオルガンがなり止むと

ちゃんと授業可能な状態に

戻っているから不思議。


あの数々のメロディーは

授業を復活させるためのものだったんですね。

教室の中のドンチャン騒ぎに

一役かっていた私も

やっとそのことが解るようになりました。

もしいつか、

あの優しいオルガンに

もう一度めぐり会う事が出来たら

どんなにすばらしいでしょう。



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花の好きなあなたに


花の好きなあなたに

どんな花の香りを届けましょう?

きれいなリボンをかけた大きな花束よりも、

土の香りがほのかに匂う

摘みたての花を贈りたいのです。

あなたあっての我が家のように、

花と土とを引き離すことなど

出来ませんものね。

それに我が家には

花の香りと同じくらいに

土の香りも必要なんです。


どこかに「花なんか嫌いだ」と言う

へんくつ屋さんがいたっけ……。

でも、本当は彼も

私たちと同じ心を持っているんです。

いつか彼の心の病気が全快して

花を愛せる時が来るまで

待っていてあげましょうよ。


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もしあなたが


あなたが乗っている汽車の窓からは

何が見えますか?

山?

海?

丘?

それともだんだん畑?


もしあなたが

山道を一生懸命登っている人を見かけたら

掛け声をかけてあげましょう。


もしあなたが

海の真っただ中で

方向を見失った船を見かけたら

正しい方向へあかりを照らしてあげましょう。


もしあなたが

丘の上でギターを弾いている人を見かけたら

いっしょに歌を歌いましょう。


もしあなたが

畑を耕している人を見かけたら

汗をふくタオルを貸してあげましょう。


これが私達の人生という旅なのです。



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お人形からの手紙


私は

あなたのお部屋のショーケースの中の

人形の一人です。


昨日あなたは

テレビを見ながら笑っていましたね。

あなたがあまり楽しそうなので

私達までつられて笑ってしまいました。


今日あなたは

何やら難しそうなお勉強していましたね。

私達にはチンプンカンプンだったけど、

みんな出来ましたか?


明日あなたは

たくさんのお友達と会うつもりのようですね。


また私達に

外での色々な出来事をお話ししてください。


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君の声を君に


小さなカセットテープに残る君の声。

まだ変声期前の

純粋で元気いっぱいの声。

ふざけた替え歌の中にも懸命さがあふれ

上手とはいえない国語の本の朗読にも

思わず拍手を贈ってしまいそうな声。

この先、何かにつまづいたり

何かに傷ついたりした時、

君もきっと心の中で

「ああ幼い頃に帰りたい」と叫ぶでしょう。

そんな時

私は君にこの声を聞かせてあげたい。

君自身のこのあどけない声が君を励まし、

粉々に砕け散った夢のかけらを

一つずつ呼び戻してくれるでしょう。


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優しい力


強い力、横暴な力だけが

力のすべてだと信じこんでいた彼。

ある時ふと彼女の口から

優しい力のことを聞きました。

「優しい力だって!

そんなもの嘘っぱちだ」と、

そっぽを向く彼に

何とかわかってもらおうと

なおも根気よく話し続ける彼女。

その唇にこそ

優しい力が宿っていることに気づいた彼は、

素直な心で

たった今自分の中に芽生えたばかりの

優しい力と向かい合いました。

強い力にあこがれていた彼は

その時から優しい力のとりこになりました。

そして今日もどこかで

彼と彼女の優しい力は

大活躍していることでしょう。



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赤と水色


赤と水色の好きな少女は

あのお人形をいっぱい飾った2階のお部屋で

毎日何を見て過ごしているのでしょう。

チャックのついたお気に入りの筆箱の中の

赤鉛筆。

港町に住む優しい伯母様から届いた

空と海の絵葉書

外の世界と絶交中の今、

小さな限られた世界の中で

大好きな赤と水色を追い続けている少女。

街角にデーンとつっ立っている

赤い郵便ポストや、

砂場で遊ぶ女の子のおさげ髪に結んだ

水色のリボンまでが

「外へ出てらっしゃいよ」と

誘いかけているのに…。

そして少女の愛する人も

とっくに自分の間違いに気づ入て

少女が再び外に出られるようになる日を

待ってくれているというのに…。


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何かが


私の中で眠っていた何かが

目をこすりながら目覚め、

起きあがり、

立ち上がり、

やがては踊り出す。

彼らとの語らいの時

私の中で死んだようになっていた何かが

脈を打ち始める。

何かが燃えあがる。

何かが弾ける。

私の中から

大空に向かって何かが飛び散る。

これこそ私の中に存在する本物の何か…。



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口紅


夕食の買い物に出かけた

お母さんの留守を狙って

鏡台の引き出しから口紅を取り出し、

恐々自分の唇にえがいていた女の子。

鏡に映った自分の顔とにらめっこして

「私にはどんな色の口紅が似合うかしら。

赤?、

オレンジ?

やっぱりピンクがいいなー」と、

ひとりごとにたわむれていた女の子。

今ではその女の子も

もうとっくに二十歳を過ぎ、

勝手気ままに商店街をぶらぶら。

あそこにもここにも

化粧品店が立ち並んでいるのに、

なぜかいつも通り過ぎるだけの彼女。

幼いころの口紅に対する憧れは

もう消えてしまったのでしょうか?

いいえ、ただ彼女には

もう口紅をつける必要がなくなったのです。

だって彼女の唇は

いつも愛の言葉で

バラ色に輝いているんですもの。

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サイフのつぶやき


僕、今とても腹ぺこなんだ。

だってさ、僕のご主人ときたら

あとの事なんてちっとも考えずに

僕のお腹の中のものを

次々と出して行くんだもん。

昨日はクッキーにチョコレート、

今日はマンガ本2冊。

そして明日なんか

500円もするプラモデルを買う気らしいよ。

お小遣いもらえる日まで

まだ十日もあるのに、

いったいどうするつもりだろう。

だけど、もし僕が

こんなことを口に出して言ったら

彼は大声で怒鳴るだろうな。

「おふくろみたいなことを言うな−ッ」って。

でもそれは

彼が自分に対して正直だから……。

そしてそれは

彼も自分の青春を

力いっぱい突っ走ろうとしている

若人の一人だから……。

だけどやっぱり

少しは僕のことも考えてほしいなァ。



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梅雨


昨年の梅雨の季節には、

ただうっとうしい雨とにらめっこして、

長い一日をもてあましている私でした。


今年も又、梅雨の季節です。

私はここでこうして

友達のことに思いを走らせながら、

心によぎる出来事を

詩につづって

楽しい時間を過ごしています。


再びめぐり来るはずの来年の梅雨には、

はたしてどんな私を見る事が出来るかしら?

恋人の事など考えながら

この雨を

ロマンチックに眺めていたいとも思うのだけど


まあ、このような事はすべて

神様にお任せしておきましょう。



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ペンフレンド


今までただ

憧れの世界でしかなかった学校生活も

近ごろは身近なものとして

私の心にも静かに流れ込んできます。

彼女の飾り気のない

素直な文章を通して…。

この彼女との長い文通生活では

本当に色々なことを教えられました。

ある時は、

どんなことでも打ち明けられる

心の安らぎを…、

又、ある時は

自分の夢を人に託すのは

押しつけるような結果ともなり

相手に

負担を感じさせることにもなりかねないという

人生の難しさを…。

そして、

彼女のユニホーム姿を楽しく想像しながら

夕焼け空を見上げることの出来る喜びを…。

そんな素晴らしいペンフレンドの彼女に一言。

「あなたのかけがえのない青春を

私にも分けて下さってありがとう」



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「さようなら」から
  「こんにちわ」へ



誰も知らない私の初恋。

15歳の春に芽生えて

誰にも知られないまま、

静かに枯れようとしている初恋の花…。

もう今日かぎり初恋の人としての彼に

「さようなら」と手を振ろう。

そして明日こそ

今よりももっと明るい気持ちで

友達としての彼に

「こんにちわ」と挨拶しよう。

なぜって?

それはやっと私が彼の中に

友としての素晴らしさを

見い出す事が出来たから……


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午後の浜辺で


秋のイワシ雲が

太陽を相手に海の上で

フォークダンスを楽しんでいる午後の浜辺。


釣り竿を手に足取りも軽く走って行く

わんぱく坊や達の元気いっぱいの歓声。

(どんな魚が釣れるか楽しみね)


見知らぬおじさんたちの

ちょっぴりしわがれた

貫禄たっぷりの話し声。

(今度は私にも声をかけてくださらない?)


波打ち際の方から

をつなぎ合って引き上げて来る

若いアベックの

あのサクサクとリズミカルな足音。

(どこまでもこの歩調で愛の道を歩いて行って)


そんなのどかな午後の浜辺で

私の秋も今スタートラインのテープを切って

静かに第一歩を踏み出す。

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朝の食卓


朝のさわやかな空気の中で

一足先に顔を洗って

みんなの揃うのを待ちわびているのは

ちょっぴりすまし顔のテーブルさん。


そこへ最初に運ばれてきた

お味噌汁のおわんの中で豆腐の坊やは、

まだねぼけまなこの目をこすっています。

(きっと昨夜遅くまで起きていたのでしょう)


2番目に顔を見せた目玉焼きさんは、

まだかまだかと

ソースのお化粧を待っています。

(彼とデートにでも行くのかしら)


3番目に仲良く手をつないで駆けこんできた

お漬物のキュウリ君と味付け海苔君は

おとなしく席について、

自分の出番を待っています。

(君達、今朝は珍しくお行儀がいいのね)


やがて食卓の王様である

炊きたてご飯も仲間入りし、

みんな揃ったところで

「おはよう」と一斉に朝のご挨拶。


こうしていつものように

我が家の朝の食卓が整いました。

いただきまーす。



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お隣さん


明るい朝の光に乗って、

にぎやかなジャズソングが流れてきます。

きっとあの

ジャンパー姿のよく似合うお隣さんが

退屈しのぎに

ステレオでもかけているのでしょう。

何気なく耳を傾けていると

なんだかとても楽しい気分になって、

その音楽に調子を合わせて

無意識のうちに足踏みをしている私。

これでもっとよく

歌詞が聞きとれたら最高なんだけど…

お隣さん、もう少し

ボリュームを上げてくださらないかしら。

そんなことを一人ごちていたら

いつの間にか

音楽はピタリと止んでしまいました。

もしかすると、どなたか

私のこのずうずうしい独り言を

気短かなお隣さんに

言いつけちゃったのかも知れません。

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あじさい


もし

「一番人の役に立っている花は?」と

尋ねられたら

私はためらいなく

「あじさい」と答えるでしょう。

なぜなら、

あじさいは梅雨に咲く花だから…。

梅雨、梅雨、梅雨…、

じめじめとうっとうしくて、

なんだか私の心もしめりがち。

そんな時ふと、あじさいに出会った私は、

無意識のうちに言葉をかわし合い、

慰められるものを見いだしました。

限りある短い命を

私たちへの愛に生きようとしているあじさい。

私もこの花のように

広い心で進んで行きたいと思うけど

花の心になりきるには

まだまだ時間がかかりそうです。


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付き人学級


ここはパパの付き人学級。

もう兄貴や姉貴達は卒業してしまい、

後に残るは末っ子のボク一人さ。

僕たち兄弟は何の計画も目的もなく、

ただパパの行く所なら

どこへでもついて行きたくて

自然な形でこの学級に入学したんだ。

居心地満点だから

僕はいつまでも卒業なんかしたくないや。

だけどこの学級は入学する時も自然なら

卒業も自然にという事を

モットーにしているらしいから、

僕もいつかは自然にこの学級から社会へと

巣立って行くのだろう。

そうなると、

僕たち兄弟以外に生徒を取らない

この学級は

ずいぶん寂しくなっちゃうナー。

ねえ、兄貴たち、

僕たちは離れ離れになっても

時々集まって同窓会を開こうよ。

そして恩師であるパパを囲んで

付き人学級時代の思い出を語り合おうよ。


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何気ない言葉で


励ましの気持ちを便せんに匂わせ、

くだらなく見える世間話や

冗談めいた言葉を並べたてただけの

彼への手紙。

なぜか「元気になってください」と言う

簡単な文字が書けないのです。

彼との間に距離を作ってしまいそうで……。

彼との間の細くて長い友情の糸が

得体の知れない何物かに

変わってしまいそうで……。

だけど、彼も

はっきりした形のお見舞い状なんかより、

こんな何気ない言葉の訪問を

待っていてくれるのではないかしら。


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成人式への出席


かんざしと振袖の

華やかなムードあふれる成人式会場に

あなたという

ちょっぴり厄介な恋人と一緒に出席した私。

もしあなたが嫌がらなかったら、

私はみんなに

あなたを紹介するつもりだったのよ。

ねえ、あなたはどうしてあの時

あんなに頑固だったの?

いいえ私にはわかっています。

あの席へあなたを連れて行くことに反対した

私の大事な人の事を考えてくれたのね。

でも私は少しも後悔などしていません。

あなたと一緒に出席したことを……。

私はますます誇りたい気持ちです、

この平凡な事を決心し、

実行した自分自身を…。


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レモンスカッシュと
 ミルクセーキ



すっぱくてちょっぴり刺激的な

レモンスカッシュは

恋の味。


あの日、海辺の近くの喫茶店で

ご馳走になったレモンスカッシュは

私ののどをさわやかに通り過ぎて行った。

こんな私にも

恋の味を教えてくださってありがとう。


だけど私はまだまだ

あなた達との友情の味の方を大切にしたい。

栄養たっぷりな

ミルクセーキのような味を……。

だって、私の心にはまだまだ

たくさんの栄養が必要だもん。


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靴跡


歩きやすい舗装道路に靴跡は残せません。

歩いたことの証拠を残せるのは、

石や砂の入り混じった汗と涙を吸い込む道。

私達は知っています。

あなたがこの歩きにくい道を

歩いて来たことを……。

私達は信じています。

あなたがこれからも

同じ道を歩いて行くことを……。

たったひとつ変わるのは

あなたの後に続いていた

二つずつの靴跡が

今日からは

仲良く四つずつ並んで残るという事だけ。



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ホタルの坊やと


寝苦しい夏の夜。

何度も寝返り打ってはため息ばかり。

そんな私の所へ

ひょっこり遊びに来てくれた

ホタルの坊やは、

あちらに飛んでいってはあかりをパッパッ。

こちらへ飛んで来てはあかりをパッパッ。

ちょっとしたホタルのワンマンショーだ。

なんだか私も坊やといっしょに

踊りたくなっちゃった。

ねえ坊や、

君のそのお尻のあかりで

私を早く夢の世界へと導いてくださいな。

夢の世界でなら私もきっと

君の良き

踊りのパートナーになれるはずなんだー。


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たとえば秋は


たとえば秋はお医者様。

私たちの心の中の

臆病やぐうたら病などと言う

やっかいな病気を

優しく優しく治してくれる。

苦い薬を飲ませることも、

痛い注射を打つこともなく

たださわやかな風を肌にそっとあてながら…。


たとえば秋はスポーツカー。

恋人たちの甘いささやきを乗せて

デートの目的地である結婚へとまっしぐら。

窓の向こうの移り変わる景色の中の

赤いもみじの葉には二人の未来を、

そして黄色いいちょうの葉には

それぞれの胸の中によみがえる思い出を

たくさんたくさん描かせながら……。



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大阪帰りのボクチン


関西なまりをちらほらのぞかせて

職場の様子などを話してくれるボクチン。

我が家はボクチンがいた頃と

あまり変わってはいないけど、

カールしたヘアーもすっかりなじみ、

すぐにほっぺを膨らませていた

あの頃のボクチンに比べると

ひと回り大きくなったみたい。

もうすべての面でボクチンは

私を追い越しでしまったね。

来年はボクチンも成人式を迎え、

大人の仲間入り。

いよいよボクチン達の時代の幕開けだ。

形ばかりにとらわれるのではなく、

中身の充実という事に力を入れた

明るい社会づくりに取り組みたいものだね。



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かー君


君の名前は和之。

君の大好きな

パパの名前の一字をもらって

和之という君の名前が生まれたんだ。

でも、君のことをずっと

かー君と呼んで来た私だから、

これからもかー君でいいよね。

かー君、ちょっとお話ししましょう。

私なんかとは違って、

かー君はあまり外へ出たがらず、

幼稚園から帰っても

もっぱら家の中でテレビを見たり、

ブロック遊びをしたり…。

おとなしくていい子という印象が

強いんだけど、

私にはそんなかー君が

ちょっぴりもの足りなく感じられるんだなぁ。

男の子はもっと活発に外で遊ばなくちゃ。

落とし穴を掘ったり、

山道を探検したり、

家の中ではできない面白いことが

いっぱい待っているよ。

かー君にはね、

私の分も外へ出て

色んな事やらかして来て欲しいんだー。

明日は思い切って外へ出てみようよ。

ねぇ、かー君!



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